奈良県暴力団排除条例
平成二十三年三月十八日
奈良県条例第三十五号
奈良県暴力団排除条例をここに公布する。
奈良県暴力団排除条例
目次
第一章 総則(第一条―第五条)
第二章 暴力団の排除に関する基本的施策(第六条―第十一条)
第三章 青少年の健全な育成を図るための措置(第十二条・第十三条)
第四章 暴力団員等に対する利益の供与の禁止等(第十四条・第十五条)
第五章 暴力団員等が利益の供与を受けることの禁止(第十六条)
第六章 不動産の譲渡等をしようとする者等の責務(第十七条―第十九条)
第七章 義務違反者に対する措置等(第二十条―第二十二条)
第八章 雑則(第二十三条)
第九章 罰則(第二十四条・第二十五条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この条例は、暴力団の排除に関する基本理念を定め、県、県民(県内に滞在する者を含む。以下同じ。)、事業者等の責務を明らかにするとともに、暴力団の排除に関する基本的施策、青少年の健全な育成を図るための措置、暴力団員等に対する利益の供与の禁止等を定めることにより、暴力団の排除を推進し、もって県民の安全で平穏な生活を確保し、及び社会経済活動の健全な発展に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 暴力団 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成三年法律第七十七号。以下「法」という。)第二条第二号に規定する暴力団をいう。
二 暴力団員 法第二条第六号に規定する暴力団員をいう。
三 暴力団員等 暴力団員又は暴力団員でなくなった日から五年を経過しない者をいう。
四 暴力団の排除 暴力団員による不当な行為を防止し、及びこれにより県内の事業活動又は県民の生活に生じた不当な影響を排除することをいう。
五 県民等 県民及び事業者をいう。
六 関係団体 法第三十二条の三第一項の規定により公安委員会から奈良県暴力追放運動推進センターとして指定を受けた者その他の暴力団の排除を目的とする団体をいう。
七 青少年 六歳以上十八歳未満の者をいう。
八 暴力団事務所 暴力団の活動の拠点である施設又は施設の区画された部分をいう。
(平二四条例一九・一部改正)
(基本理念)
第三条 暴力団の排除は、県民等が、暴力団が県内の事業活動又は県民の生活に不当な影響を与える存在であることを認識した上で、暴力団を利用しないこと、暴力団を恐れないこと、暴力団に対して資金を提供しないこと及び暴力団と交際しないことを基本として、県、市町村、県民等及び関係団体が相互に連携し、及び協力して推進されなければならない。
(県の責務)
第四条 県は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、暴力団の排除に関する総合的な施策を策定し、及び実施する責務を有する。
2 県は、前項の施策の実施に当たっては、市町村、県民等及び関係団体と相互に連携を図るものとする。
3 警察本部長は、県民等及び関係団体が安心して暴力団の排除のための活動に取り組むことができるよう、その安全の確保に配慮するものとする。
(県民等の責務)
第五条 県民は、基本理念にのっとり、暴力団の排除のための活動に自主的に、かつ、相互に連携して取り組むとともに、県が実施する暴力団の排除に関する施策に協力するよう努めるものとする。
2 事業者は、基本理念にのっとり、その行う事業(事業の準備を含む。以下同じ。)により暴力団を利することとならないようにするとともに、県が実施する暴力団の排除に関する施策に協力するものとする。
3 県民等は、暴力団の排除に資すると認められる情報を知ったときは、県に対し、当該情報を提供するよう努めるものとする。
第二章 暴力団の排除に関する基本的施策
(県の事務及び事業における措置)
第六条 県は、公共工事その他の県の事務又は事業により暴力団を利することとならないよう、暴力団員又は暴力団若しくは暴力団員と社会的に非難されるべき関係を有する者を契約の相手方としない等の必要な措置を講ずるものとする。
(県の公の施設における措置)
第七条 知事若しくは教育委員会又は地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百四十四条の二第三項に規定する指定管理者(以下「知事等」という。)は、同法第二百四十四条第一項の規定により県が設置した公の施設(以下「公の施設」という。)の使用が暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資することとなるものであると認めるときは、当該公の施設の設置及び管理に関する事項を定めた条例の規定により、使用の承認をしないことができるものとする。
2 知事等は、公の施設の使用の承認をした後において、当該公の施設の使用が暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資することとなるものであると認めるときは、当該公の施設の設置及び管理に関する事項を定めた条例の規定により、使用の承認を取り消し、又は使用を制限し、若しくは使用の停止を命ずることができるものとする。
(警察による保護措置)
第八条 警察本部長は、暴力団の排除のための活動に取り組んだこと等により暴力団から危害を加えられるおそれがあると認められる者に対し、警察官による警戒その他の当該者の保護のために必要な措置を講ずるものとする。
(県民等及び関係団体に対する支援)
第九条 県は、県民等及び関係団体が暴力団の排除のための活動に自主的に、かつ、相互に連携して取り組むことができるよう、県民等及び関係団体に対し、情報の提供、助言、指導その他の必要な支援を行うものとする。
(広報及び啓発)
第十条 県は、県民等が暴力団の排除の重要性について理解を深めることができるよう、暴力団の排除の気運を醸成するための集会の開催その他の必要な広報及び啓発を行うものとする。
(市町村への協力)
第十一条 県は、暴力団の排除のための施策を実施する市町村に対し、情報の提供、技術的助言その他の必要な協力を行うものとする。
第三章 青少年の健全な育成を図るための措置
(暴力団事務所の開設及び運営の禁止)
第十二条 暴力団事務所は、次に掲げる施設の敷地の周囲二百メートルの区域内においては、これを開設し、又は運営してはならない。
一 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する学校(大学を除く。)又は同法第百二十四条に規定する専修学校(高等課程を置くものに限る。)
二 児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第七条第一項に規定する児童福祉施設又は同法第十二条第一項に規定する児童相談所
三 社会教育法(昭和二十四年法律第二百七号)第二十条に規定する公民館
四 図書館法(昭和二十五年法律第百十八号)第二条第一項に規定する図書館
五 博物館法(昭和二十六年法律第二百八十五号)第二条第一項に規定する博物館又は同法第二十九条に規定する博物館に相当する施設
六 裁判所法(昭和二十二年法律第五十九号)第二条第一項に規定する家庭裁判所
七 少年院法(平成二十六年法律第五十八号)第三条に規定する少年院
八 少年鑑別所法(平成二十六年法律第五十九号)第三条に規定する少年鑑別所
九 更生保護法(平成十九年法律第八十八号)第二十九条に規定する保護観察所
十 世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約(平成四年条約第七号)第十一条2に規定する一覧表に記載された同条約第一条に規定する文化遺産の一部を構成する施設
十一 文化財保護法(昭和二十五年法律第二百十四号)第二十七条第一項又は奈良県文化財保護条例(昭和五十二年三月奈良県条例第二十六号)第四条第一項の規定により指定された建造物の所在する施設
十二 前各号に掲げるもののほか、特にその周辺における青少年の健全な育成を図るための良好な環境を保全する必要がある施設として公安委員会規則で定めるもの
2 前項の規定は、この条例の施行又は適用の際現に運営されている暴力団事務所については、適用しない。ただし、ある暴力団のものとして運営されていた暴力団事務所が、他の暴力団のものとして開設され、又は運営された場合は、この限りでない。
(平二七条例一・一部改正)
(青少年に対する教育等のための措置)
第十三条 県は、学校(学校教育法第一条に規定する中学校、義務教育学校(後期課程に限る。)、高等学校、中等教育学校、特別支援学校(中学部及び高等部に限る。)若しくは高等専門学校又は同法第百二十四条に規定する専修学校(高等課程に限る。)をいう。)において、その生徒又は学生が暴力団の排除の重要性を認識し、暴力団に加入せず、及び暴力団員による犯罪の被害を受けないようにするための教育が必要に応じて行われるよう適切な措置を講ずるものとする。
2 保護者その他の青少年の育成に携わる者は、当該青少年が暴力団の排除の重要性を認識し、暴力団に加入せず、及び暴力団員による犯罪の被害を受けないよう、当該青少年に対し、助言、指導その他の適切な措置を講ずるよう努めるものとする。
3 県は、前項の青少年の育成に携わる者に対し、職員の派遣、情報の提供その他の必要な支援を行うものとする。
(平二八条例七一・一部改正)
第四章 暴力団員等に対する利益の供与の禁止等
(利益の供与の禁止)
第十四条 事業者は、その行う事業に関し、暴力団員等又は暴力団員等が指定した者に対し、次に掲げる行為をしてはならない。
一 暴力団の威力を利用する目的で、金品その他の財産上の利益の供与(以下「利益の供与」という。)をすること。
二 暴力団の威力を利用したことに関し、利益の供与をすること。
三 暴力団の活動又は運営に協力する目的で、相当の対償のない利益の供与をすること。
2 事業者は、前項に定めるもののほか、その行う事業に関し、暴力団員等又は暴力団員等が指定した者に対し、情を知って、暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資することとなる利益の供与をしてはならない。ただし、法令上の義務又は情を知らないでした契約に係る債務の履行として利益の供与をする場合その他正当な理由がある場合は、この限りでない。
(契約時における措置)
第十五条 事業者は、その行う事業に関して書面による契約を締結する場合において、当該契約が暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資することとなるものである疑いがあると認めるときは、当該契約の相手方が暴力団員等でないことを確認するよう努めるものとする。
2 事業者は、その行う事業に関して書面による契約を締結するときは、当該契約が暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資することとなるものであることが判明したときは当該契約を解除することができる旨を定めるよう努めるものとする。
3 事業者は、前項に規定する事項を定めた契約を締結している場合であって、当該契約が暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資することとなるものであることが判明したときは、速やかに、当該契約を解除するよう努めるものとする。
第五章 暴力団員等が利益の供与を受けることの禁止
第十六条 暴力団員等は、情を知って、事業者から当該事業者が第十四条第一項の規定に違反することとなる利益の供与を受け、又は事業者に当該事業者が同項の規定に違反することとなる当該暴力団員等が指定した者に対する利益の供与をさせてはならない。
2 暴力団員等は、情を知って、事業者から当該事業者が第十四条第二項の規定に違反することとなる利益の供与を受け、又は事業者に当該事業者が同項の規定に違反することとなる当該暴力団員等が指定した者に対する利益の供与をさせてはならない。
第六章 不動産の譲渡等をしようとする者等の責務
(不動産の譲渡等をしようとする者の責務)
第十七条 県内に所在する不動産(以下「不動産」という。)の譲渡又は貸付け(地上権の設定を含む。以下「譲渡等」という。)をしようとする者は、当該譲渡等に係る契約の締結前に、当該契約の相手方に対し、当該不動産を暴力団事務所の用に供するものでないことを確認するよう努めなければならない。
2 何人も、自己が譲渡等をしようとしている不動産が暴力団事務所の用に供されることとなることを知って、当該譲渡等に係る契約を締結してはならない。
3 不動産の譲渡等をしようとする者は、当該譲渡等に係る契約において、次に掲げる事項を定めるよう努めなければならない。
一 当該契約の相手方は、当該不動産を暴力団事務所の用に供してはならない旨
二 当該不動産が暴力団事務所の用に供されていることが判明したときは、当該譲渡等をした者は、催告をすることなく当該契約を解除し、又は当該不動産の買戻しをすることができる旨
4 前項第二号に規定する事項を定めた契約により不動産の譲渡等をした者は、当該不動産が暴力団事務所の用に供されていることが判明したときは、速やかに、当該契約を解除し、又は当該不動産の買戻しをするよう努めなければならない。
(不動産の譲渡等の代理等をする者の責務)
第十八条 不動産の譲渡等の代理又は媒介をする者は、当該譲渡等をしようとする者に対し、前条の規定の遵守に関し助言その他の措置を講じなければならない。
2 何人も、他人が譲渡等をしようとしている不動産が暴力団事務所の用に供されることとなることを知って、当該譲渡等に係る契約の代理又は媒介をしてはならない。
(建築工事の請負をしようとする者の責務)
第十九条 県内に所在し、又は所在することとなる建築物の新築、増築、改築、移転、修繕又は模様替の工事(電気、ガス、給水その他の建築設備に係るものを除く。以下「建築工事」という。)の請負をしようとする者は、当該請負に係る契約の締結前に、当該契約の相手方に対し、当該建築工事の結果完成することとなる物件(以下「物件」という。)を暴力団事務所の用に供するものでないことを確認するよう努めなければならない。
2 何人も、自己が請負をしようとしている物件が暴力団事務所の用に供されることとなることを知って、当該請負に係る契約(この条例の施行の際現に暴力団事務所の用に供されている建築物の修繕の工事に係るものを除く。以下同じ。)を締結してはならない。
3 建築工事の請負をしようとする者は、当該請負に係る契約において、次に掲げる事項を定めるよう努めなければならない。
一 当該契約の相手方は、当該請負に係る物件を暴力団事務所の用に供してはならない旨
二 当該請負に係る物件が暴力団事務所の用に供されることが判明したときは、当該請負をした者は、催告をすることなく当該契約を解除することができる旨
4 前項第二号に規定する事項を定めた契約により建築工事の請負をした者は、当該請負に係る物件が暴力団事務所の用に供されることが判明したときは、速やかに当該契約を解除するよう努めなければならない。
第七章 義務違反者に対する措置等
(調査)
第二十条 公安委員会は、第十四条第一項、第十六条第一項、第十七条第二項、第十八条第二項又は前条第二項の規定に違反する行為をした疑いがあると認められる者その他の関係者に対し、公安委員会規則で定めるところにより、その違反の事実を明らかにするために必要な限度において、文書若しくは口頭による説明又は資料の提出を求めることができる。
(勧告)
第二十一条 公安委員会は、第十四条第一項、第十六条第一項、第十七条第二項、第十八条第二項又は第十九条第二項の規定に違反する行為があった場合において、当該行為が暴力団の排除に支障を及ぼし、又は及ぼすおそれがあると認めるときは、公安委員会規則で定めるところにより、当該行為をした者に対し、必要な勧告をすることができる。
(公表)
第二十二条 公安委員会は、第二十条の規定により説明若しくは資料の提出を求められた者が正当な理由がなく当該説明若しくは資料の提出を拒み、若しくは当該説明若しくは資料の提出について虚偽の説明若しくは資料の提出をしたとき、又は前条の規定により勧告を受けた者が正当な理由がなく当該勧告に従わなかったときは、公安委員会規則で定めるところにより、その旨を公表することができる。
2 公安委員会は、前項の規定による公表をしようとするときは、公安委員会規則で定めるところにより、あらかじめ、当該公表に係る者に対し、意見を述べる機会を与えなければならない。
第八章 雑則
(公安委員会規則への委任)
第二十三条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、公安委員会規則で定める。
第九章 罰則
第二十四条 第十二条の規定に違反して、暴力団事務所を開設し、又は運営した者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
第二十五条 法人(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。以下同じ。)の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、同条の罰金刑を科する。
2 法人でない団体について前項の規定の適用がある場合には、その代表者又は管理人が、その訴訟行為につき法人でない団体を代表するほか、法人を被告人又は被疑者とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定を準用する。
附 則
この条例は、平成二十三年七月一日から施行する。
附 則(平成二四年条例第一九号)
この条例は、平成二十四年十月三十日から施行する。
附 則(平成二七年条例第一号)
この条例は、平成二十七年六月一日から施行する。
附 則(平成二八年条例第七一号)
この条例は、平成二十八年四月一日から施行する。