広島県暴力団排除条例
平成二十二年十二月二十七日条例第三十七号
広島県暴力団排除条例をここに公布する。
広島県暴力団排除条例
目次
第一章 総則(第一条―第五条)
第二章 暴力団の排除に関する基本的施策等(第六条―第九条)
第三章 暴力団に対する利益の供与等の禁止等(第十条・第十一条)
第四章 暴力団の排除のために講ずべき措置等(第十二条―第十六条)
第五章 入札参加資格業者等に係る禁止事項(第十七条・第十八条)
第六章 暴力団に対する利益の供与等に係る調査、勧告等(第十九条・第二十条)
第七章 青少年の健全な育成を図るための措置等(第二十一条―第二十四条)
第八章 雑則(第二十五条・第二十六条)
第九章 罰則(第二十七条・第二十八条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この条例は、暴力団が県民の生活及び事業者の事業活動に脅威を与えている広島県の現状にかんがみ、広島県からの暴力団の排除に関し、基本理念を定めるとともに、県及び県民等の役割を明らかにし、暴力団の排除に関する基本的施策、暴力団に対する利益の供与の禁止、暴力団の排除のために講ずべき措置等を定めることにより、暴力団の排除を推進し、もって県民の安全で平穏な生活を確保し、及び広島県における社会経済活動の健全な発展に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 暴力団 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成三年法律第七十七号。以下「法」という。)第二条第二号に規定する暴力団をいう。
二 暴力団員 法第二条第六号に規定する暴力団員をいう。
三 暴力団員等 暴力団員及び現に第十九条第三項の規定による公表が行われている者をいう。
四 暴力団事務所 暴力団の活動の拠点となっている施設又は施設の区画された部分をいう。
五 暴力排除活動 暴力団員による不当な行為を防止し、及びこれにより県民の生活又は県内における事業者の事業活動に生じた不当な影響を排除するための活動をいう。
六 事業者 法人その他の団体(国及び地方公共団体を除く。)及び事業を営む個人をいう。
七 県民等 県民及び事業者をいう。
八 関係機関等 法第三十二条の三第一項の規定により、広島県公安委員会(以下「公安委員会」という。)から都道府県暴力追放運動推進センターとして指定されている法人その他の暴力排除活動を行う機関又は団体をいう。
一部改正〔平成二四年条例五九号〕
(基本理念)
第三条 暴力排除活動は、暴力団が集団的に又は常習的に暴力的不法行為等(法第二条第一号に規定する暴力的不法行為等をいう。)を行うおそれのある構成員で組織され、県民の安全で平穏な生活及び社会経済活動の健全な発展に多大な悪影響を及ぼす存在であることを県、県民等及び関係機関等が共に認識し、相互に緊密な連携の下で一体となり、暴力団を恐れないこと、暴力団に対して資金を提供しないこと及び暴力団を利用しないことを基本として、推進されなければならない。
(県の役割)
第四条 県は、県民等の協力を得るとともに、国、市町その他の関係機関等との連携を強化し、暴力団の排除に関する施策を総合的に推進するものとする。
2 県は、絶えず暴力団の動向に注意を払い、暴力排除活動を行おうとする県民等に対し、情報の提供その他必要な支援を行うものとする。
(県民等の役割)
第五条 県民等は、第三条に定める基本理念にのっとり、暴力団員等と不適切な関係を持つことなく、暴力団との関係の遮断を図るとともに、県が実施する暴力団の排除に関する施策に積極的に協力するよう努めるものとする。
2 事業者は、法令上の義務がある場合のほか、その行う事業により暴力団を利することとならないよう、暴力排除活動に積極的に取り組むものとする。
第二章 暴力団の排除に関する基本的施策等
(県の事務及び事業における措置)
第六条 県は、公共工事その他の県の事務又は事業により暴力団を利することとならないよう、暴力団員等を県が実施する入札に参加させず、又は法令に違反しない限りにおいて暴力団員等を補助金、交付金等の公金の交付の対象としないようにする等の必要な措置を講ずるものとする。
2 県(県が設置する公の施設の管理を委任された者を含む。)は、暴力団の活動のために公の施設を利用しようとする者に対し、利用の承認又は許可を与えないことができることとする等の必要な措置を講ずるものとする。
(市町への協力)
第七条 県は、市町において暴力団の排除のための施策が講じられるよう、市町に対し、情報の提供、技術的助言その他の必要な協力を行うものとする。
(警察による保護措置)
第八条 警察本部長は、暴力排除活動に取り組んだこと等により暴力団から危害を加えられるおそれがあると認められる者に対し、警察官による保護体制の確立、警戒の実施その他の必要な措置を講ずるものとする。
(暴力団からの離脱を促進するための措置)
第九条 県は、関係機関等と連携しながら、暴力団員の暴力団からの離脱を促進し、その社会復帰を援助するための必要な措置を講ずるものとする。
第三章 暴力団に対する利益の供与等の禁止等
(利益の供与等の禁止)
第十条 何人も、情を知って、暴力団若しくは暴力団員等又はこれらの者が指定した者に対し、暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資することとなる金品その他の財産上の利益の供与をしてはならない。ただし、法令上の義務又は情を知らないでした契約に係る債務の履行としてする場合その他正当な理由がある場合は、この限りでない。
2 暴力団員等は、他人に対し、前項に違反する行為をするよう要求してはならない。
(暴力団利用行為等の禁止)
第十一条 何人も、自己若しくは第三者の不当な利益を図り 又は第三者に損害を加える目的をもって、暴力団の威力を利用してはならない。
2 事業者は、その行う事業に関し、暴力団の威力を利用する目的で暴力団員等を従事させてはならない。
第四章 暴力団の排除のために講ずべき措置等
(不当要求があった場合等の措置)
第十二条 県民等は、暴力団員から不当要求(法第十四条第一項に規定する不当要求をいう。)があった場合又は暴力団の排除に資すると認められる情報を知った場合は、県又は関係機関等に対し、相談し、又は当該情報を提供するよう努めなければならない。
(契約時における措置等)
第十三条 事業者は、その行う事業に関して書面による契約を締結する場合において、当該契約が暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資することとなるものである疑いがあると認められるときは、当該契約の相手方が暴力団員等でないことを確認するよう努めなければならない。
2 何人も、自己が締結しようとしている契約が暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資することとなることを知って、当該契約を締結してはならない。ただし、法令上の義務又は情を知らないでした契約に係る債務の履行としてする場合その他正当な理由がある場合は、この限りでない。
3 事業者は、その行う事業に関して書面による契約を締結するときは、契約の相手方が暴力団員等であることが判明したときは催告をすることなく当該契約を解除することができる旨を定めるよう努めなければならない。
4 事業者は、前項に規定する事項を定めた契約の相手方が暴力団員等であることが判明したときは、速やかに、当該契約を解除するよう努めなければならない。
(不動産の譲渡等をしようとする者の責務)
第十四条 県内に所在する不動産(以下この章において単に「不動産」という。)の譲渡又は貸付け(地上権その他の不動産の使用をその内容とする物権の設定を含む。以下同じ。)をしようとする者は、当該譲渡又は貸付けに係る契約の相手方となるべき者に対し、当該不動産を暴力団事務所の用に供するものでないことを確認するよう努めなければならない。
2 何人も、自己が譲渡又は貸付けをしようとしている不動産が暴力団事務所の用に供されることとなることを知って、当該譲渡又は貸付けに係る契約を締結してはならない。
3 不動産の譲渡又は貸付けをしようとする者は、当該譲渡又は貸付けに係る契約において、次に掲げる旨のすべてを定めるよう努めなければならない。
一 当該不動産を暴力団事務所の用に供してはならない旨
二 譲渡に係る契約にあっては、当該不動産が暴力団事務所の用に供されていることが判明したときは、当該不動産の買戻し又は譲渡人の予約完結の意思表示によってする再売買ができる旨
三 貸付けに係る契約にあっては、当該不動産が暴力団事務所の用に供されていることが判明したときは、貸主が催告をすることなく当該契約を解除できる旨
4 前項第二号又は第三号に規定する場合となったときは、当該譲渡若しくは貸付けをした者又はその承継人は、速やかに、当該不動産を買い戻し、若しくはその再売買を完結させ、又は当該貸付けに係る契約を解除するよう努めなければならない。
(不動産の譲渡等の代理等をする者の責務)
第十五条 不動産の譲渡又は貸付けの代理又は媒介をする者は、当該譲渡又は貸付けをしようとする者に対し、前条の規定の遵守に関し助言その他の措置を講じなければならない。
2 何人も、他人が譲渡又は貸付けをしようとしている不動産が暴力団事務所の用に供されることとなることを知って、当該譲渡又は貸付けに係る契約の代理又は媒介をしてはならない。
(暴力団の活動を助長することになる契約等の要求の禁止)
第十六条 暴力団員等は、他人に対し、第十三条第二項、第十四条第二項又は前条第二項の規定に違反する行為をするよう要求してはならない。
第五章 入札参加資格業者等に係る禁止事項
(暴力団を経営及び運営に関与させること等の禁止)
第十七条 次の各号のいずれかに該当する事業者(以下「入札参加資格業者等」という。)は、その行うべき事業の経営若しくは運営を暴力団若しくは暴力団員等に行わせ、経営上若しくは運営上の重要事項の決定に暴力団若しくは暴力団員等を関与させ、又は暴力団員等を役員若しくは店舗、工場その他の事業所を代表する使用人としてはならない。
一 県が地方自治法施行令(昭和二十二年政令第十六号)第百六十七条の五第一項又は第百六十七条の十一第二項の規定によって県の実施する入札に参加する者に必要な資格を定め、その資格を満たす者を登録する名簿を作成している場合において、当該名簿に登録され、又は当該名簿への登録を申請している事業者
二 県と契約(他の者と契約したのでは、県の目的を達することができないとして行われた随意契約を除く。)を締結して、その履行を完了していない事業者
三 広島県補助金等交付規則(昭和四十八年広島県規則第九十一号)第二条第三項に規定する補助事業者等若しくは 同条第六項に規定する間接補助事業者等であり、又は 同条第一項に規定する補助金等若しくは 同条第四項に規定する間接補助金等の交付若しくは融通を申請している事業者
(暴力団の維持及び運営に協力すること等の禁止)
第十八条 入札参加資格業者等は、暴力団が勢力を誇示するために行う活動若しくは暴力団に特有の行事に参加し、又はこれらの活動若しくは行事の開催を支援するなど、積極的に暴力団の維持若しくは運営に協力し、又は関与することとなる行為をしてはならない。
2 入札参加資格業者等は、暴力団員とゴルフ、飲食(生活上必要な日常の食事を除く。)、旅行その他の遊興をしばしば共にし、又は暴力団若しくは暴力団員と社会通念上形式的及び儀礼的なものと認められる限度を超えた贈答を行うなど、暴力団又は暴力団員と社会的に非難されるべき関係を有してはならない。
3 入札参加資格業者等は、その行う事業に関し、情を知って、次の各号のいずれかに該当する事業者を利用してはならない。
一 その行うべき事業の経営若しくは運営を暴力団若しくは暴力団員等に行わせ、経営上若しくは運営上の重要事項の決定に暴力団若しくは暴力団員等を関与させ、又は暴力団員等を役員若しくは店舗、工場その他の事業所を代表する使用人としている事業者
二 第一項に規定する行為をし、又は前項に規定する関係を有している事業者
4 入札参加資格業者等は、情を知って、前項第一号に該当する事業者に資金等を供給し、又は便宜を供与してはならない。
第六章 暴力団に対する利益の供与等に係る調査、勧告等
(利益の供与等を行った者等に係る調査、勧告及び公表)
第十九条 公安委員会は、次の各号のいずれかに該当する行為をした疑いがある者(以下「調査対象者」という。)及び当該調査対象者の関係者に対し、公安委員会規則で定めるところにより、当該疑いに係る事実を明らかにするために必要な限度において、説明又は資料の提出を求めることができる。
一 第十条第一項の規定に違反して、暴力団若しくは暴力団員又はこれらの者が指定した者に対して金品その他の財産上の利益の供与をする行為
二 第十条第二項の規定に違反して、他人に前号に該当する行為を要求する行為
三 第十一条第一項又は第二項の規定に違反して、暴力団の威力を利用し、又はその行う事業に暴力団員を従事させる行為
四 第十三条第二項、第十四条第二項、第十五条第二項又は第十六条の規定に違反する行為
2 公安委員会は、調査対象者が前項各号のいずれかに該当する行為をしたと認めたときは、当該調査対象者に対し、公安委員会規則で定めるところにより当該行為を中止し、又は暴力団の排除のために必要な措置をとるよう勧告することができる。
3 公安委員会は、第一項の規定により説明若しくは資料の提出を求められた者が正当な理由なく当該説明若しくは資料の提出を拒み、若しくは虚偽の説明若しくは虚偽の資料の提出をし、又は前項の規定により勧告を受けた者が正当な理由なく当該勧告に従わなかったときは、公安委員会規則で定めるところにより、二十四月を超えない範囲内で期間を定めてその旨を公表することができる。
4 公安委員会は、前項の規定による公表をしようとするときは、公安委員会規則で定めるところにより、当該公表に係る者に対し、意見を述べる機会を与えなければならない。
(入札参加資格業者等に関する通報等)
第二十条 公安委員会は、入札参加資格業者等が第十七条又は第十八条の規定に違反していると認めるときは、その旨を知事に通報するものとする。
2 公安委員会は、前項の規定による通報をしようとするときは、公安委員会規則で定めるところにより、当該通報に係る入札参加資格業者等に対し、意見を述べる機会を与えなければならない。
3 第一項の通報を受けた知事は、当該通報に係る入札参加資格業者等を県が実施する入札に参加させず、又は法令に違反しない限りにおいて当該通報に係る入札参加資格業者等を補助金、交付金等の公金の交付の対象としないようにする等の必要な措置を講ずるものとする。
第七章 青少年の健全な育成を図るための措置等
(青少年に対する指導等の措置)
第二十一条 青少年(十八歳未満の者をいう。以下同じ。)の育成に携わる者は、青少年が暴力団の排除の重要性を認識し、暴力団に加入せず、及び暴力団員による犯罪の被害を受けないよう、地域、職域等において青少年に対し、指導、助言その他適切な措置をとるよう努めるものとする。
(暴力団員による禁止行為)
第二十二条 暴力団員は、正当な理由がある場合を除き、自己が活動の拠点とする暴力団事務所に青少年を立ち入らせてはならない。
(禁止行為に対する措置)
第二十三条 公安委員会は、前条の規定に違反する行為をした疑いがあると認められる暴力団員及びその関係者に対し、公安委員会規則で定めるところにより、当該疑いに係る事実を明らかにするために必要な限度において、説明又は資料の提出を求めることができる。
2 公安委員会は、前条の規定に違反する行為をした暴力団員に対し、公安委員会規則で定めるところにより、当該行為を中止することを命ずることができる。
(暴力団事務所の開設及び運営の禁止)
第二十四条 何人も、次に掲げる施設の敷地の周囲二百メートルの区域内において暴力団事務所を開設し、又は運営してはならない。
一 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する学校(大学を除く。)又は同法第百二十四条に規定する専修学校(高等課程を置くものに限る。)
二 児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第七条第一項に規定する児童福祉施設又は同法第十二条第一項に規定する児童相談所
三 図書館法(昭和二十五年法律第百十八号)第二条第一項に規定する図書館
四 博物館法(昭和二十六年法律第二百八十五号)第二条第一項に規定する博物館
五 社会教育法(昭和二十四年法律第二百七号)第二十条に規定する公民館
六 前各号に掲げるもののほか、特にその周辺における青少年の健全な育成を図るための良好な環境を保全する必要がある施設として公安委員会規則で定めるもの
2 前項の規定は、同項の規定の施行又は適用の際現に運営されている暴力団事務所については、適用しない。ただし、ある暴力団のものとして運営されていたこれらの暴力団事務所が、他の暴力団のものとして開設され、又は運営された場合は、この限りでない。
3 前二項の規定は、暴力団事務所の開設、運営、維持等を正当化する根拠としてはならない。
第八章 雑則
(市町の条例との関係)
第二十五条 この条例の規定は、市町が、地域の実情に応じて暴力団の排除を推進するため、条例で必要な規制を定めることを妨げるものではない。
2 前項の規定にかかわらず、市町は、条例で、前条による暴力団事務所の開設又は運営に係る規制を緩和することができない。
(委任)
第二十六条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、規則又は公安委員会規則で定める。
第九章 罰則
(罰則)
第二十七条 第二十四条第一項の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
2 第二十三条第二項の規定による命令に違反した者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
(両罰規定)
第二十八条 法人(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。以下同じ。)の代表者若しくは管理人又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前条第一項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、同項の罰金刑を科する。
2 法人でない団体について前項の規定の適用がある場合には、その代表者又は管理人が、その訴訟行為につき法人でない団体を代表するほか、法人を被告人又は被疑者とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定を準用する。
附 則
この条例は、平成二十三年四月一日から施行する。
附 則(平成二四年一〇月一〇日条例第五九号)
この条例は、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の一部を改正する法律(平成二十四年法律第五十三号)附則第一条本文に規定する政令で定める日又はこの条例の公布の日のいずれか遅い日から施行する。